「中小企業等事業再構築補助金」の概要について

2月12日に事務局が株式会社パソナに決定した報告がありましたので、今後は公募要領の発表に向けて作業が進むと思われます。

事務局決定のお知らせはこちら

さて、多くの事業者の皆様がこの補助金情報について情報を集めていらっしゃる事は、私の周りの反響からも推測できます。

しかし、まだ「公募要領」が発表されていない現時点では「確定情報」のような情報が流れる事はあまり好ましくはありません。

提示されている情報の中から推測していくしかありませんが、ここでは公表されている「事実」のみから読み取れる内容を整理してみたいと思います。

1、令和2年度 第3次補正予算の資料より

経済産業省が1月28日に発表した「令和2年度 第3次補正予算」の概要19ページに「中小企業等事業再構築促進事業」について記載がありました。

出典:経済産業省「令和2年度第3次補正予算(経済産業省関連)の概要」

 

これによると下記のように「概要」がわかります。
ここで注目すべきは予算規模でしょう。今回1兆1,485億円もの予算が割り当てられています。

一方で制度を活用する側からすると、詳しい事がわかりませんので、内容については参考程度と考えてよいと思います。

【補助対象要件】

  • 申請前の直近6カ月間のうち、任意の3カ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月間の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
  • 自社の強みや経営資源(ヒト/もの等)を活かしつつ、経産省が示す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定支援機関等と策定した中小企業等。

【補助金額・補助率】

※1.中⼩企業(卒業枠)︓400社限定。
計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本⾦⼜は従業員を増やし、中⼩企業から中堅企業へ成⻑する事業者向けの特別枠。


※2.中堅企業(グローバルV字回復枠)︓100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
①直前6カ⽉間のうち、任意の3カ⽉の合計売上⾼が、コロナ以前の同3カ⽉の合計売上⾼と⽐較して、15%以上減少している中堅企業。
②事業終了後3〜5年で、付加価値額⼜は従業員⼀⼈当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。

2、事業再構築補助金の概要資料より

その後、経済産業省が2月4日に発表した「事業再構築補助金」の「制度の概要」資料ではより具体的に事例が記載されると共に、「緊急事態宣言特別枠」について記載が含まれていました。

実際に利用する側が、どのように活用できるのか具体的な事例が記載されています。

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

3、事業再構築補助金の概要(令和3年2月15日)

2月15日には概要資料が新たに追加されました。

出典:経済産業省「事業再構築補助金の概要」より

補助対象経費の例、補助対象外の経費の例など少し詳細が追加されています。

また、「事前着手承認制度」が設けられたようです。
補助事業の着手は原則として交付決定後としながらも、事前着手申請し承認された場合は2月15日意向の設備購入契約等が補助対象となる可能性について記載があります。(対象外経費となるリスクあり)

4、事業差構築補助金の概要

【対象】

1.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
2.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

【中小企業】

通常枠 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3
卒業枠* 補助額 6,000万円超~1億円 補助率 2/3
*卒業枠:400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
※中小企業の範囲については、中小企業基本法と同様。

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

【中堅企業】

通常枠 補助額 100万円~8,000万円
補助率 1/2 (4,000万円超は1/3)
グローバルV字回復枠** 補助額 8,000万円超~1億円 補助率 1/2
**グローバルV字回復枠:100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
①直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

【緊急事態宣言 特別枠】

上記1~3の要件に加え、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること。

補助額   従業員数5人以下 :100万円~500万円
      従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
      従業員数21人以上 :100万円~1,500万円

補助率   中小企業3/4
      中堅企業2/3

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

活用イメージ

【飲食業】

喫茶店経営➡飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施。
居酒屋経営➡オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応。
レストラン経営➡店舗の一部を改修し、新たにドライブイン形式での食事のテイクアウト販売を実施。
弁当販売➡新規に高齢者向けの食事宅配事業を開始。地域の高齢化へのニーズに対応。

【小売業】

衣服販売業➡衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービス事業に業態を転換。
ガソリン販売➡新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応。

【サービス業】

ヨガ教室➡室内での密を回避するため、新たにオンライン形式でのヨガ教室の運営を開始。
高齢者向けデイサービス➡一部事業を他社に譲渡。病院向けの給食、事務等の受託サービスを新規に開始。

【製造業】

半導体製造装置部品製造➡半導体製造装置の技術を応用した洋上風力設備の部品製造を新たに開始。
航空機部品製造➡ロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立上げ。
伝統工芸品製造➡百貨店などでの売上が激減。ECサイト(オンライン上)での販売を開始。

【運輸業】

タクシー事業➡新たに一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、食料等の宅配サービスを開始。

【食品製造業】

和菓子製造・販売➡和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始。

【建設業】

土木造成・造園➡自社所有の土地を活用してオートキャンプ場を整備し、観光事業に新規参入。

【情報処理業】

画像処理サービス➡映像編集向けの画像処理技術を活用し、新たに医療向けの診断サービスを開始。

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

上記の内容を見てみると、既存事業とは違う業種、業態に進出する事業はおおむね対象になるようです。

このコロナ禍で新たな事業を模索する事業に対して広く対象となるのではないでしょうか。

補助対象経費の例

補助対象経費として記載されているのは下記の経費です。

建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等
【注】 補助対象企業の従業員の人件費及び従業員の旅費は補助対象外です

出典:経済産業省「中小企業等事業再構築促進事業」事業の概要より

補助対象経費の中に、いくつか特徴がうかがえます。

まずは「建物費」と「建物改修費」。
今まで「ものづくり補助金」「持続化補助金」でも不動産にあたるようなものはダメと言われてきましたが、建物費も建物改修費も費用がかかることから対象になるのは歓迎です。

次に、「広告宣伝費」と「販売促進費」ですが、カッコ書きで「広告作成、媒体掲載、展示会出典等」記載されています。

「ものづくり補助金」では広告や販促の費用は対象外ですが、「持続化補助金」では積極的な補助対象となってきました。

今回は事業を再構築し、広く広告宣伝を行い、一気に販路拡大していく取り組みを支援してくれるものになるようです。

 

5、まとめ

まだ詳細がわかりませんが、「公募開始」の前に情報開示されるとの記載があるので、準備して情報開示を待つしかありません。

 

1)準備すること

しかし、現時点で何もわからないと、そのまま「待つ」のではなく少なくとも下記の項目は準備をしましょう。

  • 対象となる事業を決めましょう。
    多くの企業さまでは「欲しい設備」や「このシステムを変えたい」と、事業というよりは「欲しいもの」が先に来てしまいますが、ほとんどの補助金は「補助事業」という目的とする事業を行うために必要な設備やシステムを購入する事が認められます。
    特に「中小企業等事業再構築補助金」という名称から、「事業再構築」するテーマが必要になるというわけです。
  • 補助対象経費に計上できそうなものをリストアップしましょう。
    補助対象経費の区分に記載されているからと、何でも対象経費になるわけではありません。
    今回は2月15日に発表されて資料によると、「補助対象外の経費の例」として、従業員の人件費や旅費、不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)、販売商品の原材料費、消耗品費、水道光熱費、通信費があげられています。
    その他、広告費などは「補助対象期間」と言って、交付決定後、事業完了までの期間に実施と支払いが認められるもののみが対象となります。
    事業期間が10ケ月あっても、広告の実施を行い、翌月に支払いを行う場合は実施期間は長くても9ケ月と短くなってしまうというものです。
  • 認定支援機関を確保しておく。
    これからこの補助金は申請が集中する事が予想されます。
    認定支援機関のすべてが、業務を受けているわけではありませんし、何をしてくれて費用はどのくらいかかるのか調べて頼りになる認定支援機関を確保しましょう。
  • 計画の骨子を検討する。
    2月15日に発表された「事業再構築補助金の概要」には、事業計画の策定についての記載があります。
    これは審査項目のひとつの現れですので、ポイントを抑えて置く必要があります。言い換えればこのポイントを「骨子」にして計画書を作成するということです。

事業計画に含めるべきポイントの例

●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

出典:経済産業省「事業差構築補助金の概要」より

 

ただし、詳細な審査項目は公募要領に掲載予定との事なので、公募要領発表後に正しい項目に書き換えが必要です。

具体的な審査項目は公募要領に掲載予定です。事業化に向けた計画の妥当性、
再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進などが審査項目となる
可能性があります。

出典:経済産業省「事業差構築補助金の概要」より

 

 

2)補助金でありがちな迷走

ここまで補助金を勧める内容を書かせていただきましたが、「補助金が出るから何かしよう」という発想はやめましょう。

準備してきた新たな事業があり、そのタイミングにこの補助金があったから活用しようという方に積極的に活用して頂きたい補助金です。

 

また、よく聞く話しですが、設備を欲しいと思ってメーカーに問い合わせしたら、「オプションてんこ盛りの1種の設備しか扱っていない」とか、いつもは値引きしていたのに「定価でしか販売できません」と想定していた金額より高くなったというお話があります。

更に補助金申請書を代書してくれる事業者から高額な請求があったという話もよく聞きます。

この補助金は補助率が1/2、2/3、3/4とあり、一部は自己負担が必要ですし、書類の準備や作成、申請、実績報告やその後5年間の事業化状況報告など事務的な負担も大きなものです。

そこも加味して、本当にこの補助金を使うのが良いのかご判断ください。

 

まだ続報があればご紹介をさせていただきます。

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