「ターゲット」設定必要?
「ターゲット」の話をする時、必ずといっていいほど、「なぜ、ターゲットを絞らなくてはいけないのでしょうか」という質問を受けます。
そのたびに「ターゲットを絞るのは、必要としているお客さまへ届けるためです。」と答えてきました。
でも、質問者に納得した様子はありません。
そんな疑問に詳しく解説したいと思います。
1、ターゲット設定は必要か
「ターゲット設定」は必要です!
それはなぜでしょうか。
ターゲット設定が必要ないと考える方は、範囲は広い方が多くのお客さまが対象になると考えられています。
確かに、範囲が広い方がいいように思いますが、範囲が広すぎると「お客さま」に情報が届かないのです。
ここが最も重要です。
例えば個人で経営している小さなレストランを思い浮かべてください。
そのレストランが「老若男女の皆さん」とターゲット設定を広く設定した場合は、まず老若男女のみなさんが美味しいと思えるメニューラインナップが必要ですね。種類がたくさん必要ということです。
薄味や魚が好きな高齢の方もいらっしゃれば、から揚げや焼き肉などをがっつり食べたい若い男性も、多種少量のおかずを並べた可愛らしいプレートに乗った料理が好きな若い女性もいらっしゃるでしょう。
また、がっつり食べたい方には、量が多くても安価な価格設定を求められることが多いと思いますが、料亭のような料理を求める方がいらした場合は、広めの個室でゆっくりと食事を楽しまれて、少々値段が高くても良いかもしれません。
このように、お客さまの様々なニーズに対応できるなら、ターゲットを広く持ち、皆さんの満足を得ることを目的に全方位ターゲット設定も良いかと思いますが、前述の例のようにターゲットが広すぎると、メニューは多岐にわたり、部屋も様々なニーズに対応する部屋が必要ですし、スタッフも大衆食堂のようにスピードを要求されたり、料亭のように知識とおもてなしの対応が必要と思われます。
多くの事業者さまの場合は、特定のジャンル〔上記の例でいうところの料理のジャンル(中華、和食、焼き鳥屋、定食屋、イタリアン、フレンチなど)〕を決めていらっしゃるかと思います。
例えばイタリアンなら、イタリアン好きのお客さまが一般的に感じておられるメニュー構成や店舗の雰囲気、スタッフの対応を整備してお客さまをお迎えすることになりますが、「イタリアンが好きな○○のお客さま」をターゲットとして具体的に設定していくことが必要です。
2、ターゲットは誰か
では、ターゲットは誰になるのでしょうか。
上記の例で「イタリアンレストラン(イタリア料理)」を提供するお店を開業したとします。
イタリア料理店に、行きたいというお客さまはどんな方でしょうか?
ここでは想像をめぐらします。
- イタリア好きの人
- オリーブオイルの好きな人
- ワイン好き
- イタリア人
- イタリアに住んでいた人
- いつもと違う料理を食べたいひと
- などなど
これは考え始めると、終わりなき思考に入ってしまいそうですね。
しかし、上記のリストアップした項目から対象となる人は、多少いる事が想像できます。
事業を始める前は想像の域でしかありませんが、友人や身の回りの方にアドバイスを求めることや、既に事業を行われている方は、お客さまに聞くというのが一番の近道かもしれません。
1種ではなく複数のニーズが浮かび上がってくると思いますので、このニーズを満たす事業を構築していく必要があります。
そして、複数のニーズをもつ「ターゲット顧客」の中心に位置する、一人のお客さまを決めます。
これは「的の中心」と考えて頂くとわかりやすいと思います。
様々なニーズの的があり、中心に位置するターゲットを狙うのです。
ターゲットの中心に位置する「お客さま」が浮かんだでしょうか?
この方はお名前まで具体的に決めてしまいます。
身近な方でターゲットにできる方がいらっしゃったらその方のお名前でも構いませんし、架空のお名前でも構いません。
設定するのは「お名前」「年齢」「職業」「年収」「家族構成」「趣味」「興味のあるもの」など、その方の生活スタイルまで設定するとよいでしょう。
この方を「ペルソナ」と呼びます。
3、ターゲットに情報を届ける
「ペルソナ」が決まったら、その方をしっかり想像します。
想像するのは「お名前」「年齢」「職業」「年収」「家族構成」「趣味」「興味のあるもの」など、その方の生活スタイルまで設定するとよいでしょう。
どんな生活スタイルなのか、日常生活はどのような行動なのか、どんな時に「イタリア料理」を食べたくなるのか、誰と食べにいくのか、予算はどの程度か、新たな店舗情報をどのように収集しているのか・・・などなど。
例えば、車で外出が多く、店の近所を毎日通られるという事なら「看板」、定期的にイタリアに関する情報収集で雑誌を購入されているなら「雑誌広告」、インターネットで情報収集されるということなら「HP、SNS、ネット広告」など、ペルソナの行動に合わせて、情報を見てもらえるような行動を行うことが有効です。
その際、実施した施策(今回では広告等)に対して、どの程度の反応があったのか、顧客数や売上額などの効果は必ず収集して、「費用対効果」を検証してください。
効果の薄いものにいつまでも「投資」したところで、無駄な労力にしかなりません。
しかし、効果が感じられるチャネル(広告方法)が見つかったなら、もう少しやり方を工夫して取り組んでみると、更に効果を上げることができるかもしれません。
いづれにしても、「検討(P)」→「実施(D)」→「検証(C)」→「対策(A)」を何回も繰り返して、制度の高い施策を打ち続けていくことが最も重要です。
4、ターゲットは変化していく
一旦、見つかった「ターゲット」はいつまでも同じという訳ではありません。
顧客ニーズは様々な要因で変化していきますし、社会環境も刻々と変化しています。
また、思わぬ競合が現れて、対象だったお客さまがごっそり来なくなってしまうこともあります。
そうなってしまわない為に、もしくはそうなってしまったら、すぐに次の手段を講じることができるように日頃から準備をしておくことをお勧めします。
私は「安定などない」と、自分に言い聞かせて、今お越し頂いているお客さまの声をよく聞くことにしています。
お客さまの声は、痛いご指摘もあれば、ありがたい情報も含まれています。
そして、お客さまの声に耳を傾けることこそ、次なるヒントにつながることが多いのです。
見渡してください。
既存のお客さまの声、聞き逃していませんか?
安定と思われるうちに、次の準備を行うことをお勧めしています。
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毛利中小企業診断士事務所
代表 毛利 裕之